それは偶然のような、必然。
似た者同士
今日は何しよう。
起きあがって顔を洗い、髭を剃って。
しゃこしゃこと歯磨きをし、がらがらとうがいをして。
好き放題にはねている髪を、適当に撫で付けて。
銀時はもう一度、今日は何しよう、と首を傾げる。
仕事の予定はない。
昨日のうちに今日は何もないから休み、と言っておいたためか、
神楽はさっさと遊びに行ってしまった。
とりあえず腹が減った、と頭を掻きながら冷蔵庫を開けても、空腹が満たせそうなものはなかった。
何か食べるついでにメシの材料も買ってこようと考え、財布の中身を覗く。
…まぁ、紙幣がなくなったときよりはマシな金額が入っているので大丈夫だろう。
手早く着替えて、万事屋を後にした。
今日は何しよう。
土方はふう、と紫煙を吐いて、よく晴れた空を見上げた。
久々の非番である。どんどん回ってくる書類―――約三分の一は、沖田のバズーカ使用に際しての始末書だ。
勿論沖田が書くことはない―――をそれこそ鬼のようなスピードでこなし、
それでも後回しになっていた休みがようやくとれたのだ。
鬼とは呼ばれるがそこは人間なので、さすがに休まないと仕事に支障が出る。
休むのも仕事だと割り切り、土方は昼近くまで惰眠を貪っていた。
そして起き抜けに煙草に手を伸ばし一服。
立派なニコチン中毒者の行動をとったあと、今日は何しよう、と首を傾げたのだった。
そういえば。
買い置きのマヨネーズがあと一本になっていたことを思い出す。
買いに行くついでに、軽く昼食もとることにして、土方は町へ出た。
ふらふらと行きつけの定食屋に入り、カウンターの一番奥を陣取る。
真ん中で食べると両隣から奇異な視線をよこされるので落ち着かないからだ。
「親父、いつものね」
「またかい銀さん、糖尿はいいのかい」
「ほっとけコノヤロー」
普通メシに小豆ぶっかけろって言われてやってくれる定食屋はあんまりない。
話のわかる気のいい親父と軽口をかわしながら、出てきた丼に舌鼓を打つ。
やっぱこれ最高だ。
行きつけの定食屋に入ると、カウンターの一番奥は埋まってしまっていたので、しかたなく一番手前の端に座る。
前に両隣から(心外なことに)匂いによる気分不快を訴えられたからだ。
まったく不快なのはこっちである。隣になった奴くらいは勘弁してほしい。
「親父、いつもの頼む」
「好きだねえ土方さん。飽きたりしないのかい」
「マヨネーズは永遠だよコノヤロー」
だが気のいい親父は笑いながらメシにマヨネーズをぶっかけてくれる。
こういう親父がいるからここは客が減らないんだろう、と考えながら丼をかっこむ。
やっぱこれ最高だ。
腹拵えは済んだ。
あとは買い物をして、金が余ったらパチンコでも行こうかなー。
なんてまるっきりマダオの考えのまま大江戸ストアへと向かう。
とはいっても育ち盛りの子供二人に成人男性一人の分の食事代となると余裕はあまりない。
さらに子供のうち一人の胃袋はブラックホールでもあり。
―――おかげでパチンコも随分ご無沙汰だ。
真面目になったもんだと考えながらひょいひょいと食材を買い込んだら、やっぱり余裕なんかなくなってしまった。
腹拵えは済んだ。
店内を見ると、定食屋に入ったのも少し遅めだったので、
食事が終わる頃には客もまばらになっていた。
ごちそうさんと言って会計を済ませ、ゆっくりとした足取りで大江戸ストアに向かう。
マヨの他に買うものはあっただろうか。
…特には思いつかないが、ぐるっと回ってみれば何か買うべき物を思い出すかもしれない。
どさどさと荷物を原付に積み、一息つく。
何とはなしに空を見上げてみれば憎らしいほどいい天気だ。
このあとの予定もないし、もう少し若ければ思い付きで海まで行ったりしたかもしれない。
「…もう少し若ければって…着実におっさんの思考になってるな、いかんいかん」
いまどこへ行きたいと聞かれたら「健康ランド」とか「温泉」とか言ってしまいそうだ。
おっさんを通り越してじじいになってんじゃねーかコノヤロー。
「…つか買ったデザートがやべーな。さっさと帰るか」
かぽっとヘルメットを適当に被り、原付にまたがる。
ブロロロ、とまるで乗った人物の人となりを表すようにやる気のない音を立ててそれは走りだした。
マヨとこまごました生活用品を買って、土方は店を出た。
空は青々と澄んでいて、このまま家に帰るのが勿体ないほどだ。
そうは思うが、これといってアクティブな趣味があるわけでもない。
強いて言うなら、遠出をして温泉にでもゆったりつかりたい。残念ながら今からでは無理な話だ。
そういえばどこかに健康ランドができたと聞いた。
遠出は無理だが、近くなら今度の休みにでももう少し早い時間に行けるだろう。サウナでさっぱりしたい。
「…どこぞのおっさんか俺ァ」
そう言って土方は少し笑って、帰り道をゆっくりと歩きだした。
二人が出会うのは、もう少し先のこと。
終
出会う前からこんな感じだったらいいなー、と
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