ずっとここにいて。


夕方のドラマの再放送


―――時は夕暮れ近く。
万事屋のソファには白と黒の影。
テレビにはただニュースが流れている。

「…銀」
「しー」
「しーってお前な…」

銀時は人差し指を立て、再度「しー」と言った。
それを見て土方は困った様に眉を顰め、ゆっくりと下を向いた。

その膝の上には、神楽が気持ち良さそうにぐっすりと眠っている。

「起きちまうだろ」
声を潜めて銀時が言う。自然、土方の声も小さくなる。
「…なんでこんな状況になってんだよ…」
「何言ってんの。そりゃオメーがよく分かってんだろ」





時は遡り二時間ほど前。


「おーぐし見っけたアル!」

どすん、という音と共に背中に衝撃を受け、土方はよろめいた。
「………何か用か」
またもや亀の甲羅のように背中に引っ付いてきた神楽に、ため息交じりの声で言う。
「見つけたから来ただけヨ」
「…俺ァ今日は非番じゃねえぞ」
「その服見れば分かるアル」
土方はいつものように隊服をきっちりと着込んでいる。
「分かってんなら降りろ。重い」
「レディーに向かって重いとは何アルか!!」
「痛ェ痛ェ!冗談だ冗談!!」
首を落としにかかる神楽の腕を叩き、ギブアップ。
「ゲホ…。…で、何だよ。また腹でも減ってんのか?」
「ソレいつものことネ」
「…」
土方は無言で軽食のカロリーメイトを差し出した。
「冗談ヨ」
くすくす、と笑う神楽。
「…冗談に聞こえねえよ」
「銀ちゃんそこまでマダオじゃないネ。安心するアル」
「何の話だよ」
神楽は更に楽しそうに笑った。


しばらくして。
「……ん?」
背負ってそのままにしておいた神楽が、ずしりと重くなった気がした。
「おい、チャイナ?」
少し焦りの混じった声で問うが、返事が無い。
「…神楽?」

くー。

それはとても心地よさそうな。

「―――…寝てやがる…」

…寝息だった。



ぴんぽーん。

鳴り響いたベルに、ソファに寝そべっていた銀時は煩わしそうに起き上がった。
のしのしと歩き、玄関へ降りる。
「はいはい銀さんですよー新聞はいりませんよー洗剤だけ置いてってくださーい」
「残念だが新聞も洗剤もねえよ開けろ」
「土方っ!?」
すぱぁん、と勢い良く戸が開いた。
「馬鹿、静かにしろ」
すぱぁん、と土方が銀時の頭をはたく。
「え、え、な、何?何なの?」
「…コレ」
身をよじり、未だ背中でぐっすりと眠る神楽を示す。
「あれま。良く寝てんな」
「置きに来た。まだ勤務時間なんだよ」
「うんまあ入って入って」
土方を中に招き、銀時は戸を閉めた。

ソファの前に座り、神楽を下ろそうとするが、なかなか手が離れない。
「…おい、チャイナ、てめェん家だぞ」
「んー…」
神楽の声が寝ぼけている。銀時がやれやれといったように頭をかいた。
「神楽、もうすぐドラマの再放送はじまんぞ」
「ピン子!」
飛び起きた。
「…マジかよ」
「アレ?なんで多串がいるアル?」
「…」
ちょっとあんまりだと思った。


「…あ」
「ん?」
「ビデオ予約してくんの忘れた」
「あらま」
「帰る」
「勤務時間中じゃなかったっけ?」
「…」
「あの金髪くんとかなんか言ってこない?」
「…」
「…見てく?」
「…」
「見てけば」
「………おう」





―――現在に至る。

「…俺はドラマ見てただけなんだが」
「そんで神楽はその上で寝ただけだねぇ」
「…」
土方は困った様に神楽を見下ろす。その様子を見て銀時は少し笑った。
「…仕事の方は、平気?」
「一応連絡は入れといた」
「なら、もちょっといろよ」
言いながら、横から土方を抱きしめる。

―――ここは子供だらけだ。

「…しょうがねえな」

「出来れば土方のご飯が食べたいなあ」
「どうせ何もねえんだから買い物付き合えよ」
「…わかってんじゃん。あ、この前けっこう報酬貰ったから、今日は払えるよ」
「無理すんなよ」
「全然まったく!」
「半分くらいなら出してやる」
「………オネガイシマス」
くすくす、と笑い合う。

「こいつが起きたらな」
「そだね」

土方はさら、と神楽の頭を撫でる。

神楽は嬉しそうに笑っていた。




終





家族万歳(うわ)




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