大切な大切なきみの
愛しい愛しいきみの


名前を呼んで


―――ねぇ、きみが好きなんです。


死ね。


つきあってください。


失せろ。


おれの全部をきみにあげるよ。


止めろ。


おれは全部きみのものになるよ。


黙れ。


だから、ねぇ。


来るな。


きみをください。


止めてくれ。


きみが好きです。


頼むから。


きみが好きです。


煩いんだよ。


きみが好きです。


嘘だ。


…どうして。


嘘以外に何がある?


嘘じゃあないよ。


信じられるか。


どうして。


信じられない。


信じてよ。


…無理だ。


そう吐き捨てて。
彼は去った。


ねえどうして、

そんな、


泣きそうな顔で、

信じたいって顔で、

自分の首締めるみたいに、

嘘だって否定するの。

どうしたら、きみは、

信じてくれるの。

愛しいと思うこの気持ちを、

溢れだしそうなこの気持ちを。

ねえ、信じてくれるまで、

俺は呼び続けるよ。


愛しい大切なきみの名を。


まるでそれしか知らないみたいに。

ねえ、



「土方」



ぐしゃ。

ぐしゃぐしゃ、ポイ。


「…」


土方は何度も書き直した書類を、丸めて投げた。

まったく仕事にならない。

がしがしと頭を掻き、煙草をくわえる。


どうしろと言うのだろうか。

耳を塞いだのに、
眼を瞑ったのに、
拒絶、したのに、

「…」


―――ひじかた。


あいつは、

俺の名前を呼ぶ。


…駄目だ。

このままでは。


動けなくなる。


だから、その前に。



斬らなければ。




はやく。

はやく。

息を切らし、走る。


動けなくなる前に、

消さなくては。

呟いて、走る。



「…俺を捜してんの」



その声。
立ち止まり、振り返る、そこに。


「土方」


ああ、


俺の名を、呼ぶな。


「土方」

やめろ。

「土方」

「やめろ」

「土方」

「呼ぶな!!」

土方は、叫ぶ。

銀時は、笑う。


「…好きだよ、土方」


土方は刀を抜き放ち、その切っ先を銀時の首筋に充てた。

「俺を殺すの」

土方は答えない。

「土方」

土方は動かない。


「いいよ、殺しても」

そう言って笑う銀時を見て、土方は眼を見開いた。


「お前のその刀で、斬っていいよ」


何を、言っている?

土方は、指が白くなるまで力を込め、刀を握る。


「だから、さ」

銀時が刃を素手で掴む。

「土方」

そのまま引き寄せる。

「俺の、」

近過ぎる距離。



「名前を、呼んで」



口付ける。



かしゃん、と刀が地面に落ちた。


唇が離れる。


「…土方」


土方は、震える唇を、
ゆっくりと、開く。


「…ぎ…」


銀時は、笑った。



―――待て。

このまま、呼んで、しまったら。


口を閉じ、緩く首を振る。

「…駄目、だ」

呼んでは、いけない。

「うそ、だ」

捕らえられてしまう。


「土方」


だから、

呼ぶな。

「土方」

やめてくれ。



「あいしているよ」



ああ。

もう、

駄目なんだろうか。


とうの昔に、

捕らえらていたのだろうか。


名を呼ぶその声に。

その声の主に。



「呼んで」



この温もりに。





「…ぎん、とき」




ああ、


もう、


動けない。




終。








微妙…




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