決して旨いわけじゃない。
ただ、止められないだけだ。


煙草


とあるファミレスにて。
銀時と土方は向かい合って座っていた。

銀時の前にはイチゴパフェ。
土方の前にはブラックコーヒー。

銀時の手には銀のスプーン。
土方の手には煙草。


「ねえ、ソレ、旨いわけ」

「…ああ、旨ェよ」

そんなに苦いのに、と言いながら、銀時はパフェをすくった。
甘そうなクリームと真っ赤な苺を一気に口に入れている。
土方は横を向いて煙を吐いた。

旨いわけが無い。

なのに何故「旨い」と言ったのかと聞かれると、
その逆を言って、「じゃあなんで吸うの」などと聞かれるのが煩わしかったからだ。

吸い続ける、そのわけは。

短くなった煙草を、灰皿に押し付ける。
細い煙がすーっと上がった。

「煙草、止めないの」

「…ん」

曖昧な返事を返す。

だって、これは。

煙はどんどん細くなり、薄くなる。


「…止めらんないの?」


完全に、煙が消えた。


「…は」

土方はしばし固まった。

まさか。
知っているわけ、ない。のに。

カラン、と金属音。
はっとして顔を上げると、銀時はすでにパフェを食べ終え、土方を見ていた。

「あのさ」

いつか、潰れるよ。


そう囁いて、銀時は、先に店を出た。
土方はまた固まっていた。

ゆっくりと、テーブルに視線を降ろすと。

「…あ、の野郎」


二つ分のオーダー表が置いてあった。


不本意ながらもパフェとコーヒーの代金を支払い、ファミレスを後にする。

歩きながら、ジジ、と煙草に火をつける。
深く深く肺に煙を送り込み、ゆっくりと吐く。


まだ、

まだ、足りない。


全然足りない。


この背に負う、

亡霊の数には。


…抹香臭ェのは趣味じゃねぇから。

「これが、餞だ」


そう言って土方は、煙草の煙を吐いた。


―――いつか、潰れるよ。


土方は笑った。

「上等、だ」

俺が生きるうちは、
斬った奴は全て俺の背に。

背に乗り切らなくなれば、
斬られた奴はこの煙に乗せて。

息絶えるまで地を這い。

歩き続ける皆の背を見送り。

最期まで、

線香代わりの煙草に、火をつけるだろう。



「疲れない?」

そんなことは、言ってられない。

「放っちゃえば、いいのに」

そんなことが、できるわけない。

「だからさ、」
「…金返せ」

銀時は眼を丸くした。
そして次の瞬間吹き出した。

「っはは…多串くん、意外とケチだね。おごってよ」
「ふざけんな」
言いながら土方は煙草を咥え、火をつけようとした。

が、

ぱ、と煙草が取り去られた。

「…何してんだよ」

銀時は笑う。

「こんなんで、ひとりずつ送ってないでさ」


「―――」

「俺みたいに、全部捨てちゃえばいいのに」

「―――」

「楽に、なるよ」




「…嘘ついてんじゃねーよ」


未だ背負ったままで、

潰れそうなのは、お前じゃねえか。



終





ラブはどこへ置いてきた




>back