Call,please call me.
コール
―――ピーロリッピロリッピーピロー
無音だった万事屋に、気の抜けた着信音が鳴り響く。
ソファに寝転がっていた銀時はがばっ、と勢い良く起き上がり、これ以上ないほど素早く
携帯を開けた。
新着メール一件。
ピ。
『えろっ娘大集合!いますぐアド交換しよv』
ぷつり。
「ッだぁぁあー!!!!」
銀時の中のなにかが切れた。ばふ、と固いソファに荒々しく携帯を投げ付ける。
…こない。
連絡が全くこれっぽっちもこない。
苛々した。
まるで、糖分がとれていないときのようだ。
けれどこんな苛立ち、糖分を摂っても絶対に収まらない。
つい先日。
俺の携帯の番号とアドレスを、勝手にあいつの携帯に登録した。
でも俺はわざとあいつの番号を聞かないでおいた。
オマエから連絡しろよ、なんて言って。
―――期待した俺がバカでしたか。
はぁ、と溜息。
好きだっつってんのになぁ。
言ったら言っただけ、返して欲しいって思うのは当たり前だろ?
しかも、これでも譲歩してきたつもりだ。
プライドの高そうな彼が、口付けやそれ以上も許してくれるって考えるだけで、幸せな気持ちにだってなれた。
けどさ、
人間は欲深いモンだって、よく言うじゃん。
もっと触れたいし、
もっと求めて欲しい。
もっと好きって言いたいし、
もっと好きって言って欲しい。
当たり前だろ。
なのにあいつはわかってくれないわけです。
意外と泣けるよ?コレ。
あ、ヤバ、マジで泣きそう。
声が聞きたい。
「…ひじかたー…」
ソファに突っ伏して、その名前を噛み締める。
と、そのとき。
「―――きゃあ、土方さんやないのー!」
微かに、でも確かにそう聞こえた。
銀時はまたがばっ、と身を起こした。
「もぉなんやの、最近ご無沙汰でぇ。ウチ寂しかってんで?」
それは俺の台詞です。
「今日は近藤さんおらへんね、お一人なん?ウチに会いにきてくれはったん?嬉しわぁ」
この辺の女はマシンガントークでウザいのが多い。
ずかずかずか、と人の群れもお構いなしに進む。
「つれへんなぁ、ちょっと休んでってぇな。ね?ええやろ?」
バカ女の甲高い声はよく響く。
「…や、今日は」
何か言いかけた土方の肩を、ぐいっと引き寄せる。
予想外のことだったらしく、土方は簡単に腕の中へ落ちてきた。
馬鹿みたいに驚いた顔の女を睨みながら、言う。
「…多串くんは俺のなの」
―――多分俺はすごい顔をしてる。
だって二人ともすごい顔してるから。
「な、…ん」
土方は開いた口が塞がらないようだ。
「な、なんやの…あ、アンタ…万事屋のヒトやん…」
「いや、あのね、多串くん俺のだから。今後一切半径3メートル以内に近づかないように」
『…な…』
二人とも絶句。
あーごめん、俺怒ってるから。
「さて、いこっかー。多串くんなんか食べたいものある?
ウチいま何もないからさ、コンビニでも行かない?煙草きれてない?」
「え、いや、おい…」
返事を聞く気はない。
そのままぐいぐいと腕を掴んで引きずっていく。
女はただぽかんとしながら俺たちを見送る。
最初は戸惑っていた土方も何か察したらしく、黙ってついてきた。
しかしコンビニなんかには寄らず、万事屋に直行する。
中へ入り、一息。
…あー、だめだ。
余裕ねェな、俺。
「よく行くの」
「…は…?」
「…あーゆう店」
「…あ、いや…近藤さん、が」
「付き合い?」
「…よく、たち悪ィのにひっかかる、から」
「ふぅん、優しいんだ」
「…べつ、に…」
「なァ」
土方が顔を上げる。
「俺怒ッてんの、わかる?」
にっこり笑ってやった。
「電話はかけてくれない」
「メールでもいいのにさ?」
「勿論来てくれないし」
「見かけることもなくって」
「なァ、ひじかた?」
こんなに、好きなのにさァ。
ひどいと思わねェ?
「…ッ」
うん、俺もひどいけどさ。
ひた、と土方に一歩近づいたその時。
…チャリラーッチャチャッチャラー
―――…タイミング悪ぅ…。
銀時は盛大に顔をしかめた。
困った顔で自分の携帯を見る土方。一応、取るかどうかは迷ってくれるらしい。
「…とんないの」
あー俺ってやさしー。
…顔は不機嫌なままだけれど。
土方はもっと困った顔をした。
しばらく迷ってたけど、コールは止まず。結局通話ボタンを押した。
「…何だ。…あァ?いや、今は…」
…あーあ。
呼び出しかなァ。
土方がちら、とこっちを見る。
…どうも腹が立つ。
どうせ真選組だろ。
どうせ行くんだろ。
行かせなかったらオメーどんな顔すんだろうな。
土方がもう一度俺を見て、
困った様に笑った。
「…俺ァ今日非番だっつったろうが」
…ん?
「そっちで片付けろ、今、…取り込み中だ」
…ええ?
「…俺の名前ぐれェ書けんだろ。…ああ、悪ィな」
ピ。
え。
いーの、切っちゃって。
銀時が呆然としていると、土方はそのまま携帯をカチカチと打ちだした。
カチカチカチカチ。
ピ。
ぱたん。
土方は携帯を閉じ、銀時の方を向いた。
無言。
無音。
そのとき。
ピーロリッピロリーピロー…
着信音。
「…え…」
携帯は、ソファの上だ。
なに。どゆこと。
ピー…
戸惑っている間に着信音は止んだ。
土方はずっと銀時を見ている。
銀時は動けずにいる。
その様子を見てふぅ、と緩く息を吐き、土方はもう一度携帯を開いた。
カチカチ。
ピ。
耳に充てる。
ピロリーピローピロリローピー
―――銀時の携帯が鳴った。
「…え…」
まさか、
まさか、ねえ。
ばっ、とソファに駆け寄り、携帯を開ける。
登録に無い番号。
恐る恐る、通話を押す。
耳に充てる。
『…悪かった』
少し濁った、
土方の声。
「…うん」
『…言い訳するつもりじゃねえけど』
「…うん」
『…最近、たてこんでて』
「…うん」
『…連絡、できなくて』
「…うん」
『…悪かった』
あー、
やば。
「あのさ、」
『…ん?』
「ちゅーしていい?」
言い放って、ピ、と通話を切る。
くる、と土方の方を向く。
驚いた顔。
うん、もうなんでもいいや。
やっぱすっげえ好きだわ。
終
これも友人へ。恥ずかしい話だ…
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