21
好きだ、と俺は言う。
嘘つき、と彼は言う。
嘘だよ、と俺は言う。
嘘つき、と彼は言う。
愛してる、と俺は言う。
知ってる、と彼は言った。
「…お前って…ナチュラルにすごいよね」
「あァ?何言ってんだお前」
22
仰げば尊し、我が師の恩。
なんて歌う、あの子。
ああ俺は彼の教師として彼に何をしてあげられたのかな。
そんな尊いなんて言われるようなことを。
俺は。
むしろ。
教育者として。
「先生」
左胸に花のコサージュをつけて、卒業証書入りの筒を携えて。
「…土方」
最後の制服姿。
「スーツちゃんと着るの似合わねーな、アンタ」
笑う。笑う、土方。
「…土方はきっとスーツが似合うよ」
「ああ、買った。似合ってるかはわかんねーけど」
見たいと思ったし、このまま制服でいてほしいとも思った。
別れが、すぐそこまで迫っている気がして。
俺は曖昧に笑った。
「…先生」
「ん?」
「…今まで、ありがとうございました」
「ああ―――、う、うん」
まるで別れの言葉だ。
土方は少し口籠もって、…まっすぐ、俺を見た。
「…これからも、よろしくお願いします」
その、意味を理解するのに少しかかって。
俺は不覚にも涙ぐんでしまった。
23
あいつは、自由だった。
ふらりゆらりと、自由に歩いていた。
俺は、縛られていた。
鎖を引きずりながら、走っていた。
あいつは言った。
少し休めば、と。
強引に、座らせながら。
鎖が重いことなんて、知りたくなかったのに。
弱くなって、しまった。
「じゃあ、強いってなんだよ?」
大丈夫、
お前は十分強いよ。
そうやって、
お前はまた俺を弱くする。
24
はぁ、と未だ少し熱っぽい息を吐いて、土方は突っ張っていた腕の力を抜いて布団へ伏した。
腰のべとついた感覚に思わず顔をしかめる。
「…シャワー」
ティッシュで適当な後始末をし始めた銀時に、かすれた声で浴びたいと訴える。
「…あぁー?んなもん朝にしろよ朝に…銀さんもー疲れた」
そう言って銀時はごろりと隣に寝転んだ。
「…明日の朝はゆっくりできねェんだよこのボケ…」
「つかゆっくりしたことなんかねーじゃん。いーよもう遅刻しろ!遅刻!重役出勤!
副長様だからへーきへーき!」
やる気なさそうにまくしたてる銀時に、土方はひとつ溜息を吐く。
「…お前もありえないくらい早い時間に起こしてやる…」
「…やだやだー。じゃーもう休んじゃえよ…」
「殴んぞ」
「殴ってから言わない!」
25
ばちゃり、と一際大きな水音が立ち、土方ははっと我に返った。
状況がつかめずにゆるりと辺りを見回すと、あれ、という腑抜けた声が響いた。
「気がついちゃったか」
ざあーと音を立てて血の気が引いた気がした。
暖かい湯船の中だというのに自分は今きっと真っ青な顔をしているだろう。
「どした?気分悪い?のぼせた?」
優しく気遣うような台詞が出てくるのにはすこし驚く、が。
「…テメェ指突っ込みながら言ってんじゃねェェェェェェ――――――ッッッ!!!」
「…ちょ、ちょっとちょっと…叫ばない叫ばない。他のお客さんに聞こえちゃうって」
大の男が二人入って丁度いいくらいの風呂。
万事屋の風呂は銀時一人でも狭いほどだし、真選組の風呂は大風呂だし、
土方の私邸の風呂は無理して二人入れるくらい。
これらのことから、ここがそのへんのラブホであることが伺える。
…アレ?記憶がはっきりしないんだけど。
ここがラブホなのは分かったが、なんで俺はここにいるんだ。
※後でちゃんと書くとか言ってましたがネタ忘れました
26
何も、始まらない。
最近になって糖分の摂取量が異常に増えたような気がする。
口の中が常に甘ったるくないとまず落ち着かないので、飴が切れたら授業中だろうが買いに出て行く。
そんなことやってたらいつの間にか問題児扱いされてた。
俺なんてまだ序の口で他にもいっぱいいるはずなのに。世の中は不公平だ。
そんな時だった、教育実習が始まったのは。
「土方十四郎、です」
彼は初めて教壇に立ったという割には堂々とそう言った。
どことなく気に入らなかった。
がたん、と席を立ってすたすたと教室を出ようとする。担任が何か騒いだが気にせずに。
「坂田、どこ行くんだ」
良く通る声で、呼び止められた。
担任が、「真っ白に染めた(地毛だと言っても信じない)パーマが坂田銀時です、
こいつがまったくの問題児で…」なんて説明してるところが目に浮かぶようだ。
ぷ、と笑いながら不遜に相手を見る。
「糖分補給です、せんせー」
悪びれもせずそう言ってやったら、予想外な事に彼は小さく、楽しそうに、笑った。
「おっさんになって糖尿で苦しまないように、ほどほどにしとけよ。
あとなるべく早く帰って来いな」
クラスメイトも、担任も、俺も、目を見開いた。
…まだ何も、始まってなかった。
そのときまでは。
終
とりあえずログはここまで。
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