まくらがなくなった、とその男は言った。
 
 
ピロートーク
 
 
だからなんだ、と思った土方は、「そーかよ」とだけ答えて煙草の煙を吐いた。
 
しかし銀時はそんな反応を気にすることもなく、なおもその枕がいかに自分に合っていたか、
どれほど気に入っていたかを語りだす。
 
正直、土方にとってはこの上なくどうでもいいことで、さらにどうにもできないことである。
 
適当な相づちを打ちながら煙草をふかすしかない。
 
「どこいったんだろなぁ俺の枕…」
「さァな」
またふう、と煙を吐く。

「ちょっと低反発でさ。俺の天パを包み込むような感触でさー」
「へー」
とんとん、と灰を落とす。

「もー同じものには二度と会えないねきっと」
「ふーん」
煙草を咥えて、爪のささくれを引っ張ってみる。

「…ブスバスガイドバスガス爆発」
「そりゃすげー」


「…ちゃんと聞けェェェ!!!」


「誰がんなどーでもいい話真面目に聞くかァァァ!!!」
「あっ今お前どーでもいいって言った!?俺の死活問題どーでもいいって!?」
「うだうだウゼーんだよ何が死活問題だ!早く新しいもん買うか今すぐ死ね!!」
「うわー傷ついた!砕かれた!俺のガラスのハートが粉々に!」
「んなもん危険物として捨ててやらァァ!!」
 
お互いひととおりの悪口雑言を撒き散らし、ぜえぜえと息を切らす。
 
何の生産性もない、全く以てくだらない会話。
そんなものによくこれだけ無駄な体力を使えるものだ、と土方はしみじみと思う。
 
銀時は未だぶつくさと文句を垂らしながら、言葉の端々で枕まくらマクラと呟いている。
 
なんて鬱陶しい。
 
「…馬鹿じゃねェの」
「馬鹿で結構ですー」
 
ぷい、とそっぽを向く仕草にもこの上ない鬱陶しさを感じつつ。
 
ぼんやりとそのうしろ頭を見つめながら考える。
 

まくら。
 
…まくら、なァ。
 
 
 
―――恐れて、いるのか。
 
―――「変化」を?
 
 
 
「…」
突然黙り込んだ土方を訝しんで、銀時が振り返る。
 
いつもいつも、能天気で。やる気なさそうに、死んだ魚の目で。
…それでもその心の奥底で、
変わりゆき移ろいゆくことを、恐れている?
 
 
戸惑うようなその瞳を見つめる。
 
 
…考えすぎ、か。
 
 
「…土方?」
 
 
すう、と手が伸びてくる。
何も言えず。
頬に触れてくるその、手を、拒むことなく。
 
 
「…新しいの、買えよ」
 
 
「…うん」
 
 
「…寝心地が、悪い」
 
 
「…だよね」
 
 
頬に添えられた手は、むき出しの肩へと滑っていく。
 
―――もう少し微睡むのも、悪くない。
 
 
休みの日の朝は気だるく過ぎていく。
 
土方は煙草の火を消してごろりと寝転び、
十分に取れなかった睡眠をとるために二度寝を決め込んだ。
 
もぞもぞと隣の銀時も再び寝転ぶ。
 
 

下らない時間の、下らないはなし。
  
けれどそれが、どこか、心地いい。
 

 
土方はこそりと笑った。
 
 
 


終





…これが本当のピロートーク…(寒…)




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