きみはどうなの。


純情好意


始まりはただなんとなく。
会ったのは夜中の居酒屋。
さすがに向こうもそんなとこで刀を抜く気はなかったようで。
ちらっとこっちを見てから、何も無かったように前を向くから。
そう、ただなんとなく着流し姿の彼の隣に座ってみた。

「…何か用か」
「べっつにー?俺飲みに来ただけだし」
嫌そうな眼に軽く言い返して、注文を取りにきたお姉さんには生中、とだけ答える。
すると彼はがた、と立ち上がった。
「何、帰んの」
「…席移る」
「何で?」
「…別に」
「じゃいいじゃん、ここで呑んでも」
言いながら、くい、と着流しを引っ張ってやると、嫌そうに払われた。
「…俺の勝手だろうが」
「銀さんは一緒に呑みたいなーとか思ってますー」
「俺は思ってねェ」
不毛な言い争いが続きそうになったとき、彼の後ろに困った顔の店員さんを見つけた。
「あ、ごめんねー。ホラホラ邪魔でしょ、座った座った」
どさくさに紛れて無理矢理座らせると、もうどうでもよくなったのか、そのままちびちびと日本酒を呑みだした。
…それはそれで何か寂しい。
「なーぁ」
「…んだよ」
「なんでそう、面白くなさそうな顔で呑んでんの」
何気ない言葉に、彼は少し驚いたように一瞬だけ眼を見開いた。
しかし、その表情はすぐに戻ってしまった。
「…煩ェ。これが普通だ」
そう言って、彼は煙草に火を付けた。

…なんか、
面白い。

「嘘だねぇ」
「…ァあ?」

また、表情が変わる。

「笑ってたじゃん」


―――ゴリラの前でさぁ。


…あ、
また変わった。

「…っ、テメェ、」

ぱくぱくと口が動いている。金魚みたいだ。
あはは、面白い。

ビールをぐい、と口に含み、飲み込む。
そしてにや、と笑い、

「…あっれ、呑まないのォ?」

わざとらしく言ってやった。

「…っ!」

彼はかっ、と顔を赤くして、上等だコラ、とぐいっと酒を煽った。
そしてそのまま、お互いハイペースで呑み続け、

そんなこんなで。


俺はいま彼――土方を組み敷いております。


あれ?

そんなこんなって、

何でこうなったんだっけ。


「…てめ、何、しやが、…」
身動きのとれない土方が、体の下で呻く。
酔いのせいか呂律があやしい。その目もいまはどこか焦点がぼやけているようだ。

「何しよっか」

意外としっかりした口調の自分に驚きつつ、つうっと爪の先で首筋を撫でると、びくりと体が跳ねた。

「…ざ、けんなっ…」

酔っているな、と思う。
土方も自分も。


まぁ、その場の勢いってのがあるじゃん。

そのテの趣味はあんまりなかったけど。

なんかそんな気分だったということで。


「イタダキマス」


にやりと笑いながら言うと。

見上げる眼が、
驚愕に見開かれた。




暴れ出しそうな両腕を片手で押さえ付け、白い首筋に舌を這わせる。
ちら、と顔を伺うと、唇を噛み締めて顔を背けていた。
屈辱だ、と顔に書いてあるようで。
可笑しくなって、その喉仏に吸い付いた。

「ッ、や、め…ろっ」

熱の混じった声が響く。吐息はすでに荒く、洩れる息の音にぞくぞくする。
その抗議は当然無視して裾を割り開き、する、と太腿を撫であげた。びくりと足が跳ねる。
…どうも肉付きが悪い。
「触り心地良くないよ多串くん」
「じゃ…っあ、触ってん、じゃ、ねぇっ…」
睨み上げるそのうっすらと赤い顔も、欲を煽る材料にしかならない。
「冗談」
クッと笑ってつつ、と太腿の内側を上へとなぞり、その中心に触れる。
「―や、めっ…!」
そのままやんわりと握りこむと、微かに甘い声が漏れた。
それに気をよくして、またにや、と笑う。
「結構、クるね」
すると土方は涙目で睨んできた。それも煽る材料になるんだってことを、彼はきっと知らない。
「…し、ねっ…」
「傷つくなあ、何てこと言うの」
カリ、と胸の突起を甘噛みし、弄る。
「ふっ…う、あ…や…」
同時に緩々と陰茎を上下に扱いてやると、土方は唇を噛み締めて声を抑えた。
先走りで濡れた音が響く。
それでもなお、唇を噛み締めている。
「…口、切れちゃうよ」
胸元から唇を離し、耳元で低く、囁く。
しかし土方はふい、と顔を逸らした。

「…ふうん?」

…啼かしてやる。

銀時の声に不穏な響きを感じ取ったのか、土方は顔を逸らしたままちらりと横目で様子を伺おうとした。
途端、ありえない場所に感じる異物感に目を見開いたのがわかった。
「……、…っ、いッ…!!」
痛いはずだ。先走りだけでは十分な潤いにはならない。
しかもそんなに丁寧には塗りこめてないから、余計だろう。
痛さと気持ち悪さと何故か上ってくる快感と。
ぐるぐるした感情で混乱する土方の表情はこの上なくそそる。

「あー。やっぱ足らないな。いっかいイッとく?そのほうが力も抜けるし楽かも」

こういう言葉ひとつひとつも、土方を追い詰めていく。
屈辱だと顔に書いたままの土方は答えず、唇を引き結んでじっと耐えるのだ。

「ふーん?いいんだ?…痛いのは嫌なんだけどな…まあお互い様ってことで我慢すっか」

ぴく、と反応するその一瞬がこの上なく面白い。
薄く笑いながらぐちりと嫌な音を立てて二本の指を埋め込んでいく。

「―――、ッ…!」

指が内部で蠢く度に、ひゅ、と短く息を呑む音がする。
声を上げないようにするのに必死で、その目から涙が流れていることには気づかないようだ。
ぐいっと顔を近づけて流れる涙を舐めとってやる。

すると土方は驚いたような顔でこっちを見た。

「…なに?」

問いかけると土方ははっとして、すぐに顔を背ける。
何なんだ、と思いながら指を深くまで埋める。そろそろだと思うんだけどなあ。

「―――う、ああッ…!」

その小さく洩れた声を聞いた途端、ぞくりと背中に快感が走った。

「…いいね」

きっと俺はいま、この上なく嗜虐的な顔で笑ってるだろうと思う。
指を引き抜き、その感覚にびくりと震える土方に、自身の先端を押し当てる。
ざあ、とほんのり赤く染まっていたはずの顔から一瞬で血の気が引いた。

「…、めろ…っ」

こんなときでも命令口調な土方に少し笑って、でも容赦なく腰を進めてやった。






「ひっ、あ、ふ…うあっ」
腰を動かして内部を掻き回すと、一際高い声が鳴いた。
予想通りというか何と言うか。

「やっぱ、すっげえクるよ」

なんて言うの、脳天直撃?
そう笑って言っても、もう睨まれなかった。


いつもとは違う少し潤んだ眼とか。
絶対に普段出さない濡れた声だとか。
どうも細っこい腕だの脚だの。
白い首に浮き出る筋とかは。

今全て俺のものじゃない?


あとは、


「多串くん」

呼ぶと、熱に浮かされた眼とかち合う。


「何か俺、お前が好きみたいなんだけどさぁ」


あとは、


「お前は」


その気持ち、俺に下さい。




終





加筆修正。続く。




>next


>back