折れることは、ない。
意志と云う名の刃
ロックアックス城。
かつて過ごしたこの城を、攻める時が――来てしまった。
斬り捨てる。人も、魔物も、過去も、すべて。
「…ッ」
つらい。苦しい。悲しい。悔しい。逃げたい。
守りたかった。―――すべてを。
けれど、それを口に出すことは無い。ただ黙し、剣を構える。
これは自ら選んだ道なのだから。己が信じた道なのだから。
マイクロトフは己を奮い立たせる。足を踏み出す。剣を構える。
迷うな。
焼き払う。人も、魔物も、過去も、すべて。
「…」
つらいだろう。苦しい?悲しい?悔しい?逃げ出したいか?
すべては、かつて―――守り続けてきたもの、だから。
けれど、お前が逃げることは無いだろう。ただ黙し、剣を構えるだろう。
それは自ら選んだ道なのだから。お前が信じた道なのだから。
カミューはゆっくりとマイクロトフの隣に歩み寄る。足を踏み出す。剣を構える。
怯むな。
びゅう、と敵の剣先が舞う。
多方向から向けられるそれらを、少年はトンファーでいなすのが精一杯だった。敵と味方の数には明らかな差がある。
外でも戦いは続いている。疲労と、焦りが集中力を削っていく。
―――早く。はやく。
そこへ振り下ろされる後ろからの斬撃。とっさのことで上手くいなせず、その小さな体に衝撃を受けきってしまった。
「っく、うぅ…っ」
「――だ、だめぇっ!!」
目の前にいた敵に一撃を入れ、ナナミが助けに行こうとするが、また別の剣戟が飛んでくる。
確かな殺気を持つそれを、ナナミは間一髪で避ける。その視界の端で、青の衣が舞った。
ガキィンッ!
剣と剣がぶつかり合う金属音。少年の目の前に、青の衣――マイクロトフの背があった。
「…あ…」
「城主殿、先に進んで下さいッ…!」
ざ、とマイクロトフの剣が敵を斬り捨てる。
そして、そのまま止まらずまた次の敵へと向かっていく。ひとり。ふたり。次々に敵が倒れてゆく。
ああ。
このひとは、戦いを知っている。
自分よりも、もっと。
その様子を呆然と見送る少年に、カミューが流れるように近づいてきた。
「…ここは、私とマイクロトフに任せて頂けませんか」
「え、でも…」
少年は戸惑い、更に言葉を紡ごうとする。しかし、カミューは素早く彼に背を向けた。
同時に、甲高い金属音が鳴り響く。カミューが敵の剣を受け止めていた。
「―――早く!」
「…っ」
終わらせてくれ、と。
少年には確かにそう聞こえた。
かつての「故郷」を攻めなければいけない、苦しみ。
痛いほど、わかる。
もう、誰にも悲しんで欲しくない。苦しんで欲しくない。
誰にも。
「――ナナミ!みんなっ!!」
少年が上がっていった階段を背にし、カミューとマイクロトフは並んだ。
目の前にはじりじりと近づいてくる―――敵。
そして、過去。
「…斬るのか」
すべてを。
カミューが問う。右手が、淡く光りだす。
「…ああ」
守るために。
マイクロトフが答える。剣が、光を受けて輝く。
爆発が起きた。
焼け焦げた臭いが広がり、黒い煙がたちのぼる。
煙の中から、赤と青の衣が踊り出る。
赤き烈風。
青き鬼神。
迷うことも無く。
怯むことも無く。
全てを、斬り捨てる。
後退は、存在しない。
終
すげえ古い。
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